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子宮頸がんワクチンについて

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子宮頸がんワクチンについて

(厚労省作成PDFは右アドレスをクリック:https://www.mhlw.go.jp/content/000679682.pdf

1.子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)感染

子宮頸がんとは、子宮の入口付近にできるがんです。日本では年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約2.800人が亡くなっています。特に20~40歳代の若い女性に多く、年齢別死亡者数では39歳以下で年間約150人、44歳以下で年間約300人が子宮頸がんにより亡くなっています。初期にがんが見つかり手術や放射線治療をしても、子宮や卵巣の機能を失うことで妊娠・出産・性生活に支障をきたすことがあります。また小さい子供を持つ母親であることも多く、子供を残して亡くなってしまうこともあります。

子宮頸がんの95%は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因です。HPVはごくありふれたウイルスで、生涯のうちにHPVに感染したことのある女性は50~80%といわれています。HPVは200種類以上の型があり、そのうちの30~40種類が性的接触によって感染します。その中でさらに発がん性のある高リスク型(約15種類)と尖圭コンジローマなど良性のいぼの原因となる低リスク型に分かれ、高リスク型の中でも16型と18型が子宮頸がんの原因の50~70%を占めるといわれています。

HPVは性的接触で子宮頸部の粘膜の細胞に感染し、数年以内に軽度異形成(細胞の変化)を起こしますが、多くの場合は自然消失します。しかし、なんらかの原因で高リスク型HPVに持続的に感染すると、高度異形成(前がん病変)を生じることがあり、数年から数十年経た後、ごく一部の感染者で子宮頸がんに発展する可能性があります。ごく一部とはいえ、感染すれば誰もががんになるリスクを負うことは間違いありません。さらに、HPV感染は子宮頸がんだけでなく、一部の肛門がん、陰茎がん、口腔がんなどの原因となることから、女性だけでなく男性も危機感を持つ必要があります。

2.HPVワクチン

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPV感染を予防するワクチンです。世界では約100カ国以上で使用されています。HPVワクチンは、HPVが膣や子宮頸部に接着して侵入するところを「抗体」というタンパク質によってブロックすることで感染を防ぎます。しかしHPVワクチンはすでに感染してしまったHPVを排除したり、異形成の進行を食い止める効果はありません。よって接種時期として推奨されるのは、初交前の年齢となります。現在日本では、子宮頸がんの50~70%を占める16・18型を予防する2価ワクチン「サーバリックス」と、16・18型および尖圭コンジローマの原因となる6・11型の4つの型を予防する4価ワクチン「ガーダシル」が承認され、対象年齢(小学校6年生~高校1年生相当)の女子であれば、無料で接種(定期接種)ができます。対象年齢から外れた場合でも自費で接種することは可能ですが、費用の負担は小さくはありません。また、日本でも2020年7月、すでに海外の多くの国で接種され、子宮頸がんの90%を予防する効果のある、16・18型に加えて肛門がんなどHPV関連がんに関与する9つの型を予防する9価ワクチン「シルガード9」が承認されました。今後、販売が開始され定期接種となり広く認知されれば、さらなる予防効果が期待できます。いずれのワクチンも、3回の接種で長期にわたり効果が持続されるため、長い間感染のリスクから身体を守ることができます。

3.HPVワクチンの安全性と有効性とリスク

日本においては、2013年4月から2価・4価ワクチンが定期接種となり、接種率は約70%を実現していましたが、接種後に広範な疼痛や運動障害などの「多様な症状」が報告され、わずか2ヵ月で「積極的な接種勧奨の一時差し控え」(様々な媒体を通じて積極的に接種を呼びかけることを取りやめること)が政府より発表されました。7年が経過した現在も、定期接種に変わりはありませんが、積極的な接種勧奨の一時差し控えは継続されたままであり、現在の接種率は1%以下となっています。

国内における「多様な症状」に対しては様々な調査が実施されており、厚生労働省の調査によると、国内でHPVワクチン接種を受けた約338万人(890万回接種)のうち、「多様な症状」が未回復である方の頻度は、10万人あたり約5人(0.005%)とされ、これらの症状は、身体症状に合う検査上の異常や身体所見が見つからず原因が特定できない「機能性身体症状」であると報告されています。HPVワクチン接種の有無に関わらず、この「機能性身体症状」を有する方は一定数存在することがわかっており、ワクチンとの因果関係はわかっていないとされています。また、世界ではWHOがいずれのワクチンも優れた安全性と有効性の分析結果を示すと結論付けています。世界で行われたランダム化試験をまとめて解析したコクランレビューでも、HPVワクチン接種群と対象群(プラセボ群)では、重篤な症状の発現頻度には差異がないことが示されています。一方、HPVワクチンは筋肉注射であるため、注射部位の一時的な痛みは9割以上、一過性の発赤、腫脹などの局所症状は約8割に起こるとされます。また、まれに不安や痛みなどから失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されていますが、このような失神は思春期の女性に多いとされ、HPVワクチン接種対象の年代に一致しています。接種後30分程度安静にすることで回復が見込まれます。

すべてのワクチンにおいて副反応のないものは存在しません。HPV感染後のリスクとワクチンの副反応を比較した時にHPVワクチンは、がんの恐怖から長い期間身体も心も守ってくれる薬となる可能性の方が大きいとも言えるのではないでしょうか。その他、ワクチンの副反応などに関しては以下添付文書に記載されていますのでご参照頂き、ワクチンに関することで少しでもご質問がありましたら医師、スタッフへお尋ね下さい。

4.接種期間と回数

定期接種期間:小学6年生から中学1年生相当の女子(標準的接種期間は中学1年生)
全部で3回の接種が必要となります。

2価ワクチン「サーバリックス」:10歳以上から接種可能
初回接種から1ヵ月あけて2回目、初回接種から6ヵ月あけて3回目を接種します。

4価ワクチン「ガーダシル」:9歳以上から接種可能
初回接種から2ヵ月あけて2回目、初回接種から6ヵ月あけて3回目を接種します。

参考資料

  • 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会編:子供の予防接種
  • 公益社団法人 神奈川県医師会:子宮頸がんとHPVワクチンについて
  • 日本産科婦人科学会:子宮頸がん予防についての正しい理解のために Part1 子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識
  • 村中璃子著:10万個の子宮
  • 厚生労働省:HPVワクチンの接種にあたって 医療従事者の方へ

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